オンラインカジノは「違法」な理由は?芸人事情聴取で広がる認識の変化
2月5日、吉本興業がプレスリリースを発表して以来、警視庁はオンラインカジノを利用していたお笑い芸人たちを任意で事情聴取している。芸能界とギャンブルの関係は決して新しい話題ではない。過去にはドリフターズのメンバーが競馬のノミ行為で謹慎処分を受けたこともあった。しかし、今回の報道を受けて、多くの人が「オンラインカジノは違法なのか?」と疑問に感じたことだろう。
かつては「無料でプレイできる」と謳うカジノゲームの広告がインターネット上に溢れ、SNSではインフルエンサーたちが盛んに宣伝していた。また、一部の弁護士が「違法とは言えない」と発言していたこともあり、法的なグレーゾーンと認識されていた。しかし、M-1グランプリで初の連覇を果たしたお笑いコンビ「令和ロマン」の高比良くるまさんがオンラインカジノの利用を認め、「違法ではないと思っていた」と供述したことで、改めてその法的立場が注目されることになった。
大阪カジノIRの開業とオンラインカジノの違法性
2030年には、大阪にカジノを含む統合型リゾート(IR)が開業する予定だ。これは「特定複合観光施設区域整備法(IR整備法)」に基づき、刑法185条および186条で禁止されている賭博行為に対する例外として認められている。
しかし、このIR法によって認められたカジノ施設には厳格な規定が設けられている。IR整備法第2条第7項によれば、国内で許可されるカジノゲームは「ルーレット」「バカラ」「シックボー」のみであり、日本独自の花札や丁半といったゲームは公正性の問題から禁止されている。さらに、「ギャンブル依存症対策」として施設数の制限や入場規制が導入され、カジノゲームは「その場に設置された機器または用具を使用する」ことが義務付けられている。つまり、特定の場所でリアルタイムに行われるギャンブルのみが合法とされているのだ。
この点を考慮すると、オンラインカジノは「施設の外から参加する賭博行為」に該当し、賭博罪の対象となる。たとえ海外のサーバーを利用していたとしても、プレイヤーが賭けている場所が日本国内であれば違法である。オンラインカジノに関与していた芸人が事情聴取されたのも、この法的解釈に基づいている。
オンラインカジノでの借金が「闇バイト」につながる社会問題
オンラインカジノの問題点は、違法性だけにとどまらない。借金を抱えた若者が「闇バイト」に手を出すケースが増えていることも大きな社会問題となっている。違法なギャンブルで生じた借金を返済するため、特殊詐欺や運び屋などの犯罪行為に関与するリスクが高まっているのだ。
また、オンラインカジノの広告にも大きな課題がある。表向きは「無料ゲーム」として宣伝されていても、実際には有料カジノサイトへの誘導が行われるケースが少なくない。そのため、今後はプラットフォーム側がオンラインカジノの広告に対して厳しいチェックを行う必要があるだろう。
そもそも、IR整備法の第106条および第107条では、カジノに関する広告に対して厳格な規制が設けられている。インターネット広告もその対象となり、20歳未満への勧誘は明確に禁止されている。にもかかわらず、SNSなどを通じて若年層がオンラインカジノへ誘導されるケースが後を絶たない。この点についても、今後の対策が求められる。
吉本芸人の今後と「違法カジノ」の影響
オンラインカジノに関与していた芸人たちは、これから厳しい状況に置かれる可能性が高い。特に、大阪IRに関連する仕事に関わることは難しくなるだろう。カジノ事業に関わる企業は、従業員や取引先に対して厳格なバックグラウンドチェックを行うため、過去に違法カジノの広告に関与していたことが発覚すれば、不合格となる可能性が高い。
さらに、オンラインカジノの違法性が明確になったことで、今後はインフルエンサーも宣伝に関与しない方が賢明だろう。大阪万博やその後のIR事業と芸能界の関係性を考えると、軽率な行動がキャリアに与える影響は計り知れない。
「じゃん負け」はOK?賭博罪との境界線
ギャンブルと聞くと、「じゃんけんでジュースを賭けるのも違法なのか?」と疑問を持つ人もいるかもしれない。実際に、刑法185条には「一時の娯楽に供する物を賭けた場合はこの限りではない」と記されている。これは、友人同士でのちょっとした遊びは賭博罪に当たらないことを意味する。
ゲームセンターのメダルゲームやクレーンゲーム、パチンコの景品なども、広義にはギャンブルに該当するが、景品表示法によって上限額が規定されており、違法とはならない。しかし、現金を直接賭ける行為は賭博罪の対象となるため、オンラインカジノが違法とされるのは当然の流れなのだ。
今後の展望:オンラインカジノ規制はさらに厳格化へ
今回の芸人の事情聴取をきっかけに、日本国内におけるオンラインカジノの違法性が広く認識されるようになった。特に、若者のギャンブル依存や犯罪への関与が問題視される中で、規制は今後さらに厳格化される可能性が高い。
政府や関係機関がオンラインカジノの取り締まりを強化することで、違法なカジノサイトの広告やプロモーションも厳しく規制されるだろう。今後は、SNSや動画プラットフォームの運営側が、オンラインカジノ関連のコンテンツをどのように取り扱うかが大きな課題となる。
結局のところ、オンラインカジノは「グレーゾーン」ではなく、明確に違法である。今回の件をきっかけに、芸能界だけでなく一般の人々の間でも、ギャンブルに関する正しい知識が広がることを期待したい。