一般家庭を狙う強盗事件の急増――闇バイトで集められた犯行グループの実態
一般家庭を狙った強盗事件が全国で多発し、各地で人々の不安が高まっています。
これらの事件には、違法なアルバイト、いわゆる「闇バイト」によって集められた犯行グループが関わっているとされ、特殊詐欺で培われた犯罪ノウハウが活用されていることが判明しています。
この状況において、どのような手口で闇バイトが人を集め、犯行が実行されているのか、そしてその防止策について解説していきます。
巧妙な役割分担で実行される犯行
闇バイトを通じて集められた犯行グループは、役割分担が徹底されています。
リーダー的な「指示役」、実際に強盗を行う「実行役」、盗んだ現金や貴金属を回収する「回収役」といった構成です。
指示役は秘匿性が高い通信アプリ「シグナル」などを使用し、警察の捜査が難航するように対策を講じています。
このように犯罪の指示が追跡されにくいシステムが整備されていることから、指示役が捕まることはほとんどなく、実行役や回収役など下位のメンバーが摘発されるだけで終わるケースが多いのが実情です。
なぜ闇バイトの募集は途切れないのか?
実行犯として闇バイトに参加する者たちは、指示役からの命令に従い、指示された通りに犯罪行為を遂行します。
「窓を破れ」や「金庫を開けろ」などの具体的な指示がイヤホンを通じて伝えられ、その場で行動するだけの「捨て駒」として利用されています。
こうした使い捨ての実行犯が逮捕されることを見越して、指示役は常に新しい人員を補充する必要があるため、SNS上で闇バイトの募集が絶えないのです。
また、実行犯として集められる人々の多くは20代の若者です。
中にはアルバイトの内容が強盗であることを知らされずに現場に向かうケースもあり、こうした無知から犯罪に巻き込まれる若者が後を絶ちません。
特にSNSやネット上で「高額報酬」を掲げて募集されるアルバイトに応募した結果、犯罪に巻き込まれてしまうという事例が増えています。
「ホワイト案件」の名を騙った危険な求人
一部の闇バイトの求人は巧妙で、犯罪に加担するアルバイトであることを隠すため「ホワイト案件」と称されることもあります。
「高額報酬」「即日支払い」「UD(受け子や出し子の隠語)」「運び」などの言葉が含まれている求人には、特に注意が必要です。これらの用語が含まれる求人がSNSやインターネット上に掲載されている場合、それが闇バイトの可能性が高いと考え、応募を避けるのが賢明です。
一方で、興味を持ってDM(ダイレクトメッセージ)を送り、相手と連絡を取る人も少なくありません。
その際、返信が即座に届き、秘密保持のために「テレグラム」や「シグナル」といった通信アプリに誘導される場合は、闇バイトである疑いを強く持つべきです。
これらのアプリは、犯罪の指示を記録に残さないためのものとして使用されています。一般の求人では、通常このような通信アプリを使うことはありません。
リクルーターの巧みな話術による勧誘
闇バイトのリクルーターたちは、特殊詐欺の経験者が多く、その話術は非常に巧妙です。
威圧的に話す者もいれば、親切心を装い、優しく接する者もいます。
その親しみやすい態度に騙され、犯罪行為とは気づかずに話を進めてしまう人も少なくありません。
リクルーターはまず、応募者から個人情報を引き出します。
名前や生年月日、住所といった情報だけでなく、借金の有無や月収の希望額など、金銭的な困窮状況を探り、応募者の心理を巧みに操るのです。
「大変だよね」「これまでお金で苦労してきたんだね」などと親身な言葉をかけて安心感を与え、
「うちの仕事ならすぐにお金を稼げる」と勧誘します。このような面接では通常、借金や金銭状況を聞くことはあり得ないため、その点を疑うことが必要です。
さらに、犯罪に関わらせる前に、応募者の身分証を写真で送るよう求めることが多いです。
こうして得た個人情報を使って応募者を脅し、従わせようとする手口が後を絶たないため、特に注意が必要です。
グレーな内容は断る勇気を持つ
近年では、求人サイトにも「配達」「回収」などの名目で闇バイトが紛れ込むケースが見られます。
求人サイトだからといって安全とは限らず、掲載されているアルバイトが詐欺に加担させるものである可能性もあります。
特に、詐欺行為やグレーな業務内容が感じられる求人には応募しないことが、自分の身を守るために重要です。
SNSが日常的に使われる今、親世代もその危険性を理解し、家庭内での注意喚起が必要です。
子どもたちがSNSで目にする求人にはどのような文言が使われているのか、また犯罪に誘導される危険性があることを話し合い、情報を共有することで、犯罪に巻き込まれるリスクを減らすことができます。
SNS上の「現金プレゼント」などの危険アカウントにも要注意
「現金をプレゼントします」などといったアカウントも、犯罪グループがターゲットを誘い込むための手口の一つです。取材によれば、ある人が「新規口座を開設すれば資金援助が可能」といった書き込みに惹かれてキャッシュカードを提供してしまい、それが詐欺に悪用されるケースもありました。
このようにSNSには、さまざまな犯罪の罠が潜んでいます。危険なアカウントをフォローしない、あやしげなワードを検索しないといった基本的なリテラシーを身につけることが、犯罪に巻き込まれないための防御策となります。
**犯罪被害を防ぐためにできること**
強盗事件や詐欺の手口が進化し、SNSを介した闇バイトのリスクが高まっている現代では、自分自身で防御策を講じることが重要です。特にSNSの求人に対しては、簡単にDMを送らない、怪しい言葉が含まれているものには応募しない、見知らぬアカウントとは関わらないようにすることが大切です。
家庭内で闇バイトの危険性について話し合い、子どもたちにも注意喚起を行うことで、犯罪被害を未然に防ぐことが可能になります。特に高額報酬を謳う求人や即日支払いを掲げるものに対しては疑念を持ち、慎重に対応するよう心がけましょう。