ギャンブルで借金を作ったSさんの話(これはフィクションです)
私の名前は佐藤剛35歳。
妻と子供が二人居るのに、ギャンブル好きで浪費家。消費者金融からお金を借りまくってなんとかしのいでいるけど、ついに家賃滞納で、大家さんから「出ていってくれ」と言われてしまいました。
そんな時、街角で占い師が声をかけてきたのです。
「あなたの未来はこうなるでしょう」と一枚のカードを渡しました。
そのカードを見て愕然としました。
占い師の驚愕の一言とは?
だって、そこには『借金地獄』という文字があったのですから……。
しかし、私は思い直します。
―――いや、まだ遅くはない! まだ何とかなるはずだ。だけどこのままでは破滅してしまう……と。
そこで、今までの生活態度を変える覚悟で占い直してもらいました。
すると、そこに書かれていたのは……
・ギャンブルをやめる→破滅する
・浪費癖を改める→破滅する
・仕事を変える(会社を辞める)→破滅する
絶望的な結果です。
私は破滅したくなかった!
でも、それでも諦めきれません。
私はまだ破滅したくなかったんです。
そこでもう一度別の占い師に占い直してもらいました。そしてその結果は……
・仕事を頑張る→そこそこ成功するが、またもや借金が増える →やがて破滅 やっぱりダメなんですね。
そう思ったとき、ふと思いつきました。
――そうだ! あの占い師に相談してみよう! そうすれば、きっとこの苦しみから抜け出せるはずだ!!
私は早速占い師の元へ向かいました。そして事情を説明します。
すると占い師は言いました。
――それは困りましたね……。実はあなたのように、人生をやり直すために何度も占ってほしいと言われる方が沢山いるんですよ。
え!? それじゃあ意味がないじゃないか! 私がそう言うと、占い師はニヤリと笑いながら答えたのです。
占い師から告げられた唯一の借金から逃れる方法とは?
――いえいえ、大丈夫ですよ。ちゃんとした方法がありますから。ただし、少しばかり痛かったり、恥ずかしかったりするかもしれませんよ? それでもよろしいですかな?
――はい。構いません。どうか教えてください。
私が懇願すると、占い師は静かに語り始めました。
――わかりました。ではまず、目を閉じて両手を前に出してください。
言われた通りの姿勢を取ります。
すると突然、手首に何かが巻き付いた感触がありました。
――いいと言うまでそのまま動かないでください。
言われるままにじっとしていると、今度は首にも同じような感覚が走りました。一体何をされているのか不安になりながらも、必死に耐え続けます。
占い師が示した運命のカードには何が書かれていた?
どれくらい時間が経ったでしょうか? 不意に耳元で囁かれました。
――もう動いてもいいですよ。
恐る恐る目を開くと、目の前には一枚のカードが置かれていました。
それはスペードの女王が描かれたカードでした。
――これがあなたの運命を表すカードです。さぁ、よく見てください。
言われてカードを覗き込みます。そこにはこんなことが書かれていました。
――今すぐ首を吊ったほうがいいでしょう……
はい? 思わず顔を上げます。
するとそこには、満面の笑みを浮かべた占い師の姿がありました。
そして彼はこう言ったのです。
――これであなたの未来は決まりました。どうぞお幸せに……。
こうして私は死にました。
最悪の結末で終わるはずが、実は……
目が覚めるとそこは真っ暗な部屋だった。
どうやら寝ていたらしい。
とりあえず目を開けてみると……。
老女と中年の男性二人が心配そうに、私の顔を覗き込んでこう言いました。
「良かった!目が覚めたのね。あなたはもう50年も眠り続けていたのよ」
なんとその二人は、妻と成長した息子だったのです!
そして、起き上がった私は、恐る恐る鏡を覗き込みました。
そこに写っていたのは……。
見たこともない老人でした。 終わり