若者の間で広がるオンラインカジノの危険性
近年、オンラインカジノに関する問題が大きく取り上げられるようになった。その背景には、芸能人やスポーツ選手がオンラインカジノの広告に登場し、若者を中心に広がっていることがある。意外なことに、オンラインカジノが違法であることを知らない若者も多く、特に20代の利用者の間でギャンブル依存症に陥るケースが増えていると報告されている。
全国で啓発活動を行う女性も、自らギャンブル依存症を経験した一人だ。彼女は「オンラインカジノが違法であることを認識していない人が多く、特に高校生の間ではその傾向が顕著」と指摘する。実際に、親の口座にアクセスし、600万円もの大金をオンラインカジノに費やしてしまった高校生の例も報告されているという。
ギャンブル依存症の深刻化――相談件数の75%が若年層
「ギャンブル依存症」の相談件数の約75%が20代から30代の若者によるものだという。この問題に対し、どのように克服していくべきかが問われている。
「ギャンブル依存症問題を考える会」の代表である田中紀子さんも、かつては長年ギャンブル依存症に苦しんできた経験者だ。彼女は、自らの経験をもとに、多くの若者がギャンブルの罠にはまらないよう啓発活動を続けている。
田中代表が関西の大学ゼミで行ったオンラインカジノに関する意識調査によると、「違法」と認識している人はわずか17.4%に過ぎなかった。さらに、56.5%が「グレーゾーン」、26.1%が「合法」と考えているという。つまり、多くの若者がオンラインカジノの違法性を正しく理解していないのが現状なのだ。
有名人の影響で「合法」と勘違いする若者たち
こうした誤解が生まれる背景には、オンラインカジノの広告に有名なユーチューバーやスポーツ選手が起用されていることがある。若者の中には、「有名人が宣伝しているなら問題ない」と信じ込んでしまう人も少なくない。実際、SNSや動画サイトでは、人気のインフルエンサーがオンラインカジノのプレイ動画を配信し、「簡単に稼げる」と煽る場面も多く見られる。
田中代表は、「オンラインカジノの違法性についての啓発が十分ではなく、自己責任の意識が強まっている。結果として、『相談しても無駄』と考える人が増え、問題がさらに深刻化してしまっている」と警鐘を鳴らす。そして、「まずはオンラインカジノで被害を受けている若者を守ることが重要。特に高校生や大学生への啓発を充実させたい」との考えを示している。
コロナ禍が招いたギャンブル依存の低年齢化
「ギャンブル依存症問題を考える会」の調査によると、コロナ禍の影響でギャンブル依存症に陥る年齢層が低年齢化していることも明らかになっている。2023年のデータによれば、20代から30代の相談が全体の約75%を占めている。また、オンラインカジノに関する相談件数も増加の一途をたどっており、2019年には8件だったものが、2023年には97件に達しているのだ。
この急増の背景には、コロナ禍による外出自粛や経済的不安が影響していると考えられる。特に、コロナ禍で収入が減少した人々が「手軽に稼げる手段」としてオンラインカジノに手を出し、結果として依存症に陥るケースが増えているのだ。
オンラインカジノ依存から抜け出すために
ギャンブル依存症は一度陥ると抜け出すのが難しい。しかし、正しい知識と支援があれば克服することも可能だ。田中代表は、「まずは家族や友人に相談することが大切」と強調する。
また、ギャンブル依存症の克服には、専門機関のサポートも重要だ。現在、日本国内にはギャンブル依存症の相談窓口やリハビリ施設が存在し、多くの人が回復の道を歩んでいる。早期に相談し、適切な支援を受けることが依存からの脱却につながる。
オンラインカジノ問題を社会全体で考えるべき時
オンラインカジノは手軽に始められる反面、依存症という大きなリスクを抱えている。違法であるにもかかわらず、多くの若者がその事実を知らずに利用している現状は深刻だ。
この問題を解決するには、単に違法性を指摘するだけでなく、依存症の危険性や対策についての啓発活動を強化することが必要だ。特に、SNSや動画サイトで影響力のあるインフルエンサーが発信する情報の取り扱いについても、社会全体で議論し、規制を強化することが求められる。
オンラインカジノがもたらす依存症の問題は、個人だけでなく社会全体の課題である。今こそ、若者を守るための具体的な対策を進めるべき時ではないだろうか。